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山口祐未さん (8lxjb1mh)2023/1/25 23:29 (No.680767)削除「ワークショップ」の多様な見方
中野民夫『ワークショップー新しい学びと創造の場―』(岩波新書,2001)評
「楽しい、人とのつながりを感じる、わくわくする」そんな学び方があるのなら注目せざる負えない。文中の筆者の言葉である。
この学び方を指す「ワークショップ」とは何か?この本はワークショップの基礎的な定義の部分から目的、技法、効果まで丁寧に述べられている、ワークショップの入門書として適した読み物である。
用語の解説の丁寧さもさることながら、実際の効果と成果を示すワークショップの具体例記述がこの本の注目点である。ジョアンナ・メイシーの「繋がりを取り戻す」ワークショップ、「絶望と再生のワーク」「自分という自然に会う」などの実際に開催されたワークショップを元にスケジュールや参加者の感想、心情の変化など細かく記述されている。
五感を使い、体を使い、人とコミュニケーションをとりながら学びを経ていく過程は、本の序盤で開設されたワークショップを行う意義と効果について理解をより深める事が出来る材料になっていく。
他には、ワークショップと自己啓発セミナー・カルト宗教などとの違いについて解説されているのもこの本の面白い所である。ワークショップの心や意識を扱うきわどい側面を自覚する必要があると筆者は語る。目的を「洗脳」とするその手の集団は、参加者を隔離し、供犠や思想を徹底的に教えこみ、最後に壁を乗り越えさせる体験をさせ、人間を変化させていく手口があり、一部の過程がワークショップと類似しており「我に返る」ワークショップと「我を忘れる」洗脳の違いを解説している。
似たような事例とその危うさについても載っており、この本がワークショップを多角的な視点から見つめている事がわかるトピックであるので、方法論だけでなく他の多様な視点からワークショップを見て知識を吸収できる。(770字)